ペットの寿命は年々延びており、「高齢期(シニア期)」を迎える犬や猫が増えています。

かつては12〜13歳を超えると長生きとされていましたが、今ではそれ以上に長生きする子も珍しくありません。しかし、人間と比べると年齢の進み方が早いため、1年ごとの健康管理と予防医療がより重要になります。

例えば、犬や猫の1年は人間の4〜5年分に相当すると言われており、わずか1年で健康状態が大きく変化する可能性があります。そのため、若い頃は元気だったペットでも、高齢期に入ると病気のリスクが高まるため、定期的な健康診断による早期発見・早期治療が欠かせません。

「年齢のせい」と見過ごしがちな症状も、実際には病気の初期サインである可能性があります。愛犬・愛猫の健康を長く維持するためには、異変に早く気づき、すぐに対処することがポイントです。

この記事では、高齢期(シニア期)に気をつけたい病気と健康診断の重要性について詳しく解説します。
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高齢期に気をつけたい主な病気

シニア期に入ると、犬や猫は年齢とともに特定の病気にかかりやすくなります。特に、心臓病・腎臓病・がんは高齢のペットに多い代表的な疾患です。これらの病気の特徴と早期発見のポイントを理解することで、ペットの健康寿命を延ばすことができます。

〈心臓病〉

特に小型犬では、僧帽弁閉鎖不全症が多く見られます。これは心臓の弁が正常に機能しなくなる病気で、初期には無症状ですが、進行すると咳が増えたり、運動を嫌がるようになったりします。定期的な聴診や超音波検査で早期発見が可能です。
犬の心臓病についてはこちらで解説しています
僧帽弁閉鎖不全症についてはこちらで解説しています

〈腎臓病〉

猫に多い病気のひとつが慢性腎臓病です。腎臓の機能が徐々に低下し、老廃物をうまく排出できなくなる病気です。

初期には目立った症状がなく、気づいたときには進行していることが多いため、定期的な血液検査や尿検査がとても重要です。水をよく飲む、尿の量が増える、食欲が落ちるといったサインが見られたら、すぐに動物病院で相談しましょう。
猫の腎臓病についてはこちらで解説しています

〈がん(腫瘍)〉

犬・猫どちらも高齢になると腫瘍ができやすくなります。悪性の場合は進行が早いこともあり、「しこりがある」「食欲が落ちた」「体重が減った」などの症状が見られたら注意が必要です。がんの種類によって治療法は異なりますが、定期健診で早期発見することで治療の選択肢が広がります。

品種や体格による病気の違い

・小型犬(チワワ、トイプードル、ダックスフンドなど)
心臓病、気管虚脱、椎間板ヘルニア、膝蓋骨脱臼など

・大型犬(ゴールデンレトリバー、ラブラドールなど)
股関節疾患、骨肉腫(がん)など

・猫
慢性腎臓病、心筋症など

ペットの品種や体格によってかかりやすい病気が異なるため、定期健診で適切なチェックを行うことが重要です。

定期健康診断の重要性と検査内容

高齢期の健康を維持するためには、定期的な健康診断が欠かせません。若い頃は1年に1回の健康診断でも十分ですが、シニア期(7歳以上)に入ったら半年に1回の健康診断が推奨されます。

〈推奨される健康診断の頻度〉

・7歳以上のペット:1年に2回(6か月ごと)
・10歳以上のペット:できれば3か月〜6か月ごとの検査が理想

〈基本的な検査項目〉

・血液検査:貧血、腎臓病、肝臓病、炎症の有無をチェック
・尿検査:腎機能の評価、尿糖・タンパク・潜血の確認
・レントゲン検査:心臓、肺、骨の状態をチェック
・超音波検査:内臓の異常、腫瘍の有無を確認

日常生活での健康管理

〈適切な食事管理〉

高齢期には代謝や消化能力が落ちやすいため、シニア向けフードや、低タンパク・低リンのフードが必要になる場合があります。また、腎臓や肝臓に負担をかけにくい食事を選ぶことも重要です。

また、食欲が落ちる子には、風味の良いフードや嗜好性の高いウェットフードを取り入れるのも良い方法です。

〈運動管理〉

関節への負担や心臓への負担を考慮し、無理のない運動を継続することが大切です。例えば、滑りにくい床材を敷いて室内で歩かせる、坂道や階段の昇降を控える、短時間の散歩を複数回に分けるなど、年齢に応じた運動量の調整が必要です。

〈口腔ケアの重要性〉

歯の健康も、高齢期の全身の健康に直結します。歯周病が進行すると、口の痛みだけでなく、腎臓や心臓にも悪影響を及ぼす可能性があります。歯磨きを習慣化するのが理想ですが、難しい場合はデンタルガムや専用フードなどを活用すると効果的です。歯茎が赤く腫れている、口臭が強くなったといった変化が見られたら、早めに獣医師に相談しましょう。

〈快適な生活環境づくり〉

高齢の犬や猫は、温度や湿度の変化に敏感です。夏場はエアコンや扇風機で熱中症を防ぎ、冬場は暖房やホットマットなどを利用して快適な室温を保ちましょう

また、足腰の弱まりに備えて滑り止めマットを敷く、段差にスロープを設置するなど安全対策を行うことも重要です。

高齢期の行動・身体の変化に注目しよう

〈行動の変化〉

高齢になると、今まで活発だった犬や猫でも活動量が減り、散歩を嫌がる、昼間に寝ている時間が増えるなどの変化が見られることがあります。

〈身体の変化〉

高齢の犬や猫では、体重が減少しやすくなる一方で、逆に太りやすくなる子もいます。定期的に体重測定を行い、適正体重を維持できるよう食事量や運動量を見直しましょう。

また、毛並みがパサついてきたり、皮膚が乾燥してフケが増えたりするのも、栄養状態や内臓の健康状態と関係していることがあるため、注意深くチェックしましょう。

〈認知機能の変化と対応〉

高齢になると、犬や猫も認知機能が低下し、環境への適応力が落ちることがあります。飼い主様の呼びかけに反応しにくくなる、トイレの失敗が増える、同じ場所をぐるぐる回るといった行動が見られる場合は、認知機能の低下が疑われます。この場合、生活リズムを整える、刺激のある遊びを取り入れる、獣医師と相談の上でサプリメントを活用するなどの工夫が効果的です。

日々の健康チェックポイント

毎日の健康チェックを習慣にすることで、病気の早期発見につながります。

食欲や飲水量の変化はないか
排便・排尿の頻度や性状に異常はないか
毛並みや皮膚の状態に変化はないか
歩き方や動きに違和感はないか

これらのポイントを意識し、少しでも気になることがあれば獣医師に相談することが大切です。

まとめ

高齢の犬や猫は、若い頃とは違ったケアが必要になります。適切な食事管理、運動の調整、口腔ケア、快適な生活環境の整備を行うことで、高齢期も元気に過ごせるようになります。

また、日々の観察を習慣化し、小さな変化にも気づけるようにすることが重要です。高齢期は「まだ大丈夫」ではなく、「少しでも気になることがあれば相談する」という意識を持つことが、ペットの健康寿命を延ばすための大きなポイントです。

兵庫県神戸市須磨区の『おおした動物病院』
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