近年、飼育環境や医療の進歩により、長生きする猫ちゃんが増えています。それはとても喜ばしいことですが、年齢を重ねるなかで増えているのが「慢性腎臓病」です。初期症状がわかりにくく、発見されたときにはすでに進行していることも少なくありません。
そこで今回は大切な愛猫の健康を守るために知っておきたい、慢性腎臓病の初期症状や早期発見のポイントについてご紹介します。

高齢猫に多い「慢性腎臓病」ってどんな病気?
慢性腎臓病は、腎臓の働きが少しずつ低下していく進行性の病気です。加齢に伴って発症しやすく、10歳を超える猫の多くが何らかの腎機能の低下を抱えているとも言われています。
原因は主に加齢ですが、遺伝的な要因や感染、薬剤・中毒物質によるダメージが関与することもあります。
完治は難しいものの、早期発見し適切なケアを行えば、寿命の延長や生活の質(QOL)を守ることが可能です。
見逃しやすい初期症状に注意
慢性腎臓病の怖さは、目立った症状が現れにくい点にあります。以下のような変化が見られたら、ぜひ一度ご相談ください。
・水をよく飲む、おしっこの量が増える
・食欲が落ちてきた
・少し体重が減ってきた
・嘔吐が時々見られる
これらは「年のせいかな」と、つい見過ごされがちなので注意が必要です。
また、病気が進行すると被毛のツヤがなくなる、明らかな食欲不振、嘔吐の頻度増加、口臭の悪化など、よりはっきりとした変化が現れます。
愛猫のちょっとした変化に気づけるのは、毎日一緒に過ごしている飼い主様だからこそ。違和感を覚えたときは、どうか遠慮なく動物病院にご相談ください。
動物病院で行う慢性腎臓病の検査と診断
猫の腎臓病は、以下のような検査を組み合わせて総合的に評価します。
・血液検査
腎機能を示すBUN、CRE、SDMAといった項目を調べ、腎臓の状態を確認します。
・尿検査
尿の濃さ、尿タンパクの有無、尿比重などを測定し、腎臓のろ過能力を評価します。
・超音波検査
腎臓の大きさや形、内部構造をリアルタイムで観察できます。腫瘍や結石の有無、進行具合の確認にも役立ちます。
超音波検査でわかることや検査の特徴・メリットについてより詳しく知りたい方はこちら
猫はとても繊細で、病院での検査や処置にも大きなストレスを感じてしまうことがあります。そのため当院では、猫にかかる負担をできる限り減らすことを大切にしています。
特に超音波検査では、高性能の機器を導入し、無麻酔・無痛でやさしく行える体制を整えています。じっとしているのが苦手な猫ちゃんにも、落ち着いた環境で、できるだけリラックスして検査を受けてもらえるように工夫しています。
腎臓病と付き合うための治療と日常ケア
腎臓の機能は一度失われると回復が難しいため、完治を目指すのではなく、進行を遅らせ、日々の生活を快適に過ごせるようサポートすることが治療の目的となります。
治療には以下のような方法があります。
・血圧や腎臓への負担を抑える内服薬
・脱水予防や老廃物排出のための点滴治療(皮下・静脈)
・腎臓に配慮した療法食やサプリメントの使用
これらの治療は、猫の体調や性格、病気の進行度、飼い主様のご希望に応じて調整します。定期的な検査を行いながら、その時々に合った最適な治療法を選び、無理なく長く続けられるケアを目指しましょう。
健康診断が「気づけるきっかけ」に
猫の腎臓は、機能の約75%が失われるまで明確な症状が出にくいといわれています。そのため、飼い主様が気づいたときには、すでに病気が進行しているケースも多く見られます。
早期発見のためには、年に1〜2回の定期的な健康診断がとても重要です。特に血液検査や尿検査では、正常な数値を把握しておくことで、次回以降の検査で微細な変化にいち早く気づけるようになります。見た目ではわからない初期の異常も、こうした定期的な検査から見つかることが多く、健康寿命を延ばす大きな手がかりになります。
また当院には、腎臓病(泌尿器)の認定医を持っている獣医師が在籍しており、専門的な視点からの診断・治療はもちろん、日常生活におけるアドバイスまでトータル的にサポートが可能です。
まとめ
慢性腎臓病は、早く気づいて、無理のない形でケアを続けることが何よりも大切です。
シニア期の猫と暮らしている方はもちろん、若いうちから健康診断を習慣にすることで、病気の早期発見・対応につなげることができます。
「気になることがある」「もしかして腎臓かも…」と思ったときは、どうぞお気軽にご相談ください。
兵庫県神戸市須磨区の『おおした動物病院』
℡:078-731-0001