「最近、うちの子が“カッカッ”と咳をするようになった」「夜中や朝方によく咳をしている気がする」そんな変化に気づいたことはありませんか？
咳と聞くと「風邪」や「喉の違和感」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実は、犬の咳の中には心臓病と深く関係しているケースもあります。特に“カッカッ”と喉を鳴らすような乾いた咳は、心臓の異常が隠れているサインであることも少なくありません。
今回は、犬の咳の種類や心臓病との関係、そして早期発見の重要性について詳しくご紹介します。
犬の咳には種類がある？咳の音でわかる病気のヒント
咳の原因は一つではなく、音の特徴によって疑われる病気が異なります。
・「カッカッ」：心臓病や気管の異常で見られやすい乾いた咳
・「ケホケホ」：感染症などでよくみられる湿った咳
・「ゴホッ」：喉に異物が引っかかったときに出やすい咳
このうち「カッカッ」という乾いた咳は、心臓が肥大して気管を圧迫しているサインの可能性があります。特に小型犬や高齢犬で多く見られるため、注意が必要です。
ただし咳の原因は心臓病だけではなく、呼吸器感染症やアレルギー、空気の乾燥、誤飲などでも出ます。重要なのは、「咳が続く」「夜間や運動後に出やすい」 などの特徴的なパターンに気づき、放置せずに動物病院に相談することです。
心臓病で咳が出るのはなぜ？
心臓病によって咳が出る主な理由は2つあります。
① 心臓の肥大による気管圧迫
僧帽弁閉鎖不全症などでは心臓の左心房が拡大し、すぐ近くを通る気管を圧迫します。その結果、気道が狭くなり「カッカッ」と乾いた咳が出やすくなります。
② 肺水腫による呼吸障害
心臓のポンプ機能が低下すると血液が肺に滞り、水分が肺の中に染み出して「肺水腫」を引き起こします。肺に余分な水分がたまると、気道や肺胞が刺激されてうまく呼吸ができなくなり、その刺激を排出しようとして咳が出ます。進行すると呼吸困難を伴い、重症の場合は命に関わる危険があります。
このように心臓病による咳は、風邪や一時的な喉の違和感とは異なる深刻なサインです。特に夜間・早朝や運動後に出やすく、「元気だから大丈夫」と見過ごすと進行を見逃してしまうことがあります。
心臓病が進行すると、咳以外にもサインが現れる
初期段階の心臓病では、症状は目立ちにくいため気づきにくいのが実情です。しかし、進行とともに、以下のような変化が見られるようになります。
・散歩後や運動後に疲れやすくなる
・安静にしているのに呼吸が荒い
・夜中に咳き込む
・呼吸のリズムが早くなっている
・舌や歯茎が紫がかって見える（チアノーゼ）
・突然倒れる、意識を失う（失神）
特に「チアノーゼ」や「失神」といった症状が出ている場合は、心臓病がかなり進行している可能性があります。
正確な診断には「心エコー検査」が不可欠
心臓病の診断では、「心音の異常（雑音）の有無」を聴診器で確認したり、「心臓の大きさ」をレントゲンで調べたりしますが、これだけでは正確な病状は分かりません。
心臓の動きや弁の状態、血液の流れなどを詳しく調べるには、「心エコー検査（超音波検査）」が必要です。
当院では、心臓用の超音波機器を導入し、循環器に詳しい院長・大下獣医師が丁寧に検査・診断を行っています。
「咳は出ているけど、原因がはっきりしない」「他院では風邪と言われたが、改善しない」そんなときは、心臓の状態をしっかりと確認することで、早期治療につなげることができます。
超音波検査についてより詳しく知りたい方はこちら
咳が心臓病と診断されたら？治療と日常のケア
心臓病は完治が難しい病気ですが、早期に発見して管理することで生活の質を保ちながら長く一緒に過ごすことが可能です。
主な治療・ケアは以下の通りです。
・投薬治療：心臓の負担を軽減する血管拡張薬、利尿薬、強心薬などを組み合わせる
・食事療法：塩分を控えた心臓にやさしいフードに変更する
・生活管理：激しい運動を避け、ストレスをかけない生活を心がける
・運動の調整：激しい運動や興奮を避け、安静を意識した生活をする
飼い主様ができること｜咳を見逃さない観察と記録
咳の原因を正確に診断するには、飼い主様の観察が大きなヒントになります。
例えば、動物病院に行く前に以下のような情報をメモしておくと、診断にとても役立ちます。
・咳が出る時間帯（朝方？夜中？運動後？）
・咳の頻度や強さ
・咳の様子を動画に撮っておく
・どのような状況で咳が出るか（寒いとき？食後？）
咳が続くからといって、必ずしも心臓病というわけではありません。しかし、「ただの風邪」と決めつけて様子を見るよりも、検査によって原因をはっきりさせることで、安心につながります。
まとめ
犬の咳は、体からの重要なサインです。特に「カッカッ」といった乾いた咳は、心臓の病気の可能性もあるため、注意が必要です。
「咳が増えてきた気がする」「もしかして心臓が悪いのかな？」そんな不安を感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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