「最近うちの子、遊ばなくなったな…」「なんだか、よく隠れるようになった気がする」
そんな何気ない変化が、実は“心臓病のサイン”かもしれないことをご存じでしょうか？
犬では「咳」や「運動後の息切れ」といった分かりやすい症状がよく知られていますが、猫でははっきりとした症状が出にくく、「年齢のせいかな」と見過ごされてしまうケースも少なくありません。
今回は、猫の心臓病で見逃されやすい初期症状、飼い主様が日常で気をつけたい変化、診断・治療の方法について詳しくご紹介します。
猫に多い心臓病の種類とは？
猫の心臓病のなかで最も多く見られるのが、「肥大性心筋症」です。
この病気は、心臓の筋肉が異常に厚くなることで、心臓がうまく拡張できず、血液を十分に送り出せなくなる状態を引き起こします。特に純血種の猫に多く、若い猫でも発症することがあるため注意が必要です。
そのほかにも、以下のような心臓病が見られます。
・拡張型心筋症：心臓の筋肉が薄くなり、ポンプ機能が低下します。
・血栓症：心筋症が進行することで心臓内に血栓ができ、それが血管を詰まらせることで突然歩けなくなるといった症状を引き起こすことがあります。
これらの病気は、初期には無症状で進行するケースが多く、見た目には元気そうに見える猫でも、心臓病が静かに進行している可能性があるため、注意深い観察と定期的な健康チェックが重要です。
猫の心臓病の隠れた初期症状
猫の心臓病は、急激に悪化するケースもあるため、日常の細かな変化に目を向けることが重要です。
〈日常行動の変化〉
・以前はよく遊んでいたのに、おもちゃに反応しなくなった
・キャットタワーなど、高い場所に登らなくなった
・毛づくろいの回数が減り、被毛がボサボサしている
こうした変化は、「加齢のせいかな？」と思われがちですが、心臓病の初期サインであることもあります。
〈体調面の変化〉
・食欲が落ちてきた
・じっと隠れて出てこなくなる時間が増えた
・呼吸が浅く、少し早くなっている気がする
「静かにしているだけ」と見えるときでも、体内では異変が進行していることがあります。
〈緊急性の高い症状（すぐに動物病院へ）〉
次のような症状が見られた場合は、すぐに動物病院を受診してください。
・口を開けて苦しそうに呼吸している
・突然、後ろ足が動かなくなり立てない（血栓症の可能性）
・失神した、ふらついてまっすぐ歩けない
いずれも命に直結する危険なサインです。迷わず受診してください。
年齢・品種別のリスク
猫の心臓病は、年齢や品種によって発症リスクが異なります。
・若い猫～成猫：遺伝的に肥大型心筋症を持っているケースがある
・シニア猫（7歳以上）：腎臓病など他の病気と併発しやすい傾向
・好発品種：メインクーン、ラグドール、ノルウェージャン、スコティッシュフォールドなど
これらの品種の猫と暮らしている場合や、家族猫に心臓病の既往がある場合は、定期的な健康診断と心エコー検査を受けておくと安心です。
犬とは違う、猫特有の心臓病サイン
「犬が心臓病になると咳が出る」と聞いたことがあるかもしれません。しかし、猫の場合は咳が出ることはほとんどなく、まったく別のサインで現れます。
| 比較項目 | 犬 | 猫 |
|---|---|---|
| 主な症状 | 咳、呼吸困難、息切れ | 活動量の低下、隠れる、呼吸が浅い |
| 診断のきっかけ | 咳・音で気づく | 行動変化を飼い主様が察知する |
「咳が出ていないから大丈夫」ではなく、猫ならではの変化に気づくことが早期発見のカギです。
心臓病を見逃さないために必要な検査
猫の心臓病は、聴診だけでは見逃されることが多いのが特徴です。心雑音が聞こえない場合も少なくなく、「問題なし」とされてしまうこともあります。
確実な診断には心エコー検査が欠かせません。エコー検査で分かることは以下の通りです。
・心臓の壁の厚み
・弁の動きや血液の流れ
・心臓のサイズと収縮機能
当院では心臓用のエコー機器を導入しており、正確な診断が可能です。「気になる変化がある」「好発品種だから心配」と感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
心臓病と診断されたら｜治療と生活管理
猫の心臓病には完治が難しいケースもありますが、早期に見つけて適切な治療を行えば、生活の質（QOL）を保ちながら長く元気に過ごすことができます。
・投薬治療：心臓の負担を減らし進行を抑える
・血栓予防の薬：合併症である血栓症を防ぐ
・生活環境の見直し：過度な運動を避け、静かで安心できる環境を整える
・定期的な経過観察：状態の変化を把握し、薬の調整を行う
飼い主様ができる日常のチェックポイント
猫の心臓病は、飼い主様のちょっとした気づきが早期発見につながります。
・いつもと様子が違うと感じたら、動画を撮っておく
・食欲や呼吸の様子などを、日々メモしておく
・定期健診のときに、気になる変化を獣医師に相談する
まとめ
猫の心臓病は、咳などの分かりやすい症状が出にくいため、気づかれずに進行してしまうことがあります。
「遊ばなくなった」「隠れるようになった」といった何気ない行動の変化が、実は病気のサインであることもあります。
加齢や性格の変化と見過ごさず、日常的な観察を続けることが早期発見につながります。
「もしかして」と感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。
兵庫県神戸市須磨区の『おおした動物病院』
℡：078-731-0001