「腎臓病と診断されたけれど、何を食べさせればいいのかわからない」
「療法食をすすめられたけれど、なかなか食べてくれない」
大切な家族である愛犬や愛猫が病気だと分かったとき、驚きとともに「毎日のごはんやおやつはどうしたらいいのだろう」と悩んでしまう飼い主様はとても多くいらっしゃいます。
腎臓病の管理では、お薬や点滴といった治療だけでなく、毎日の食事管理(食事療法)が極めて重要です。腎臓への負担を抑えた適切な食事を続けることで、病気の進行を緩やかにし、安定した体調を維持しやすくなります。
今回は、犬・猫の腎臓病における食事管理の大切さ、療法食の選び方、そして愛犬・愛猫がごはんを食べてくれないときの具体的な工夫について紹介します。

腎臓病で食事管理が大切な理由
腎臓は、体の中で不要になった老廃物や余分な水分をろ過し、尿として体外へ排出する重要な働きを担っています。しかし、腎臓の働きが低下すると、本来排出されるべき老廃物が体内に溜まりやすくなってしまいます。
毎日の食事から取り込む栄養素は、その内容によって腎臓の負担を大きく左右するため、慎重なコントロールが必要です。腎臓病の食事管理では、主に次の3つの成分のバランスを考慮します。
1. リン
腎臓病が進行すると体内に溜まりやすくなり、さらに腎臓の機能を低下させる直接的な原因になります。腎臓病の食事管理において、最も厳しく制限すべき成分の一つです。
2. タンパク質
体に欠かせない重要な栄養素ですが、体内で代謝(分解)されるときに、腎臓に負担をかける老廃物(尿素窒素など)を作ります。そのため、質の高いタンパク質を「多すぎず少なすぎず」適量に調整する必要があります。
3. ナトリウム(塩分)
多すぎるナトリウムは血圧を上昇させ、腎臓に余計な負荷をかけてしまいます。病気の進行を抑えるために、健康なときよりも制限が必要です。
これらを病期(ステージ)に合わせて適正にコントロールすることが求められます。
ただし「体に悪いなら、とにかく減らせばいい」と自己判断で極端に制限しすぎるのは禁物です。今度は深刻な栄養不足や筋肉量の低下を招き、かえって体力を奪うことになりかねません。
必要な栄養をしっかりと保ちつつ、腎臓への負担を減らすという「絶妙なバランス」が不可欠なのです。
療法食とは?市販食やシニア食との違い
動物病院で推奨される「療法食」とは、特定の病気の治療や管理をサポートするために、栄養成分のバランスが特別に調整された食事のことです。
これに対して、一般的な市販のペットフード(総合栄養食)は「健康な犬や猫」を対象に作られています。そのため、腎臓への負担に配慮した成分バランスにはなっておらず、腎臓病の犬や猫が一般的なフードを食べ続けると、病気を急速に進行させてしまうリスクがあります。
飼い主様からよく「シニア用(高齢犬・高齢猫用)フードなら、腎臓にも優しいのでは?」とご質問をいただきますが、シニア用フードと腎臓病用の療法食はまったくの別物です。シニア用はあくまで健康な高齢ペットの標準的な栄養を満たすものであり、腎臓病に対応できるほどの成分制限はされていません。
また、パッケージに「腎臓の健康維持に配慮」と書かれた市販フードも、基本的には健康な子の「予防」を目的としたものです。すでに腎臓病を発症している子の体には合わない場合が多いため注意しましょう。
療法食は、その子の病気の種類や現在の進行度(ステージ)、血液検査・尿検査の結果に合わせて選ぶ必要があります。自己判断で購入せず、必ず獣医師のアドバイスのもとで選ぶようにしてください。
腎臓病の療法食はどう選ぶ?
腎臓病用の療法食を選ぶときは、成分だけでなく、その子が無理なく食べ続けられるかも大切です。特に次のポイントを意識して、その子にぴったりのものを探していきます。
1. 食べ続けられるものを選ぶ
どんなに優れた療法食でも、食べてくれなければ意味がありません。
現在、腎臓病の療法食には、ドライタイプ、ウェットタイプ、チキン味、フィッシュ味、粒の大きさが違うものなど、さまざまな種類があります。
犬や猫によって好みは違いますし、同じ子でも日によって食べ方が変わることがあります。いくつか試しながら、その子が食べやすいものを探していきましょう。
2. 他の持病も合わせて考える
もし、腎臓病のほかに心臓病、アレルギー、糖尿病などがある場合は、腎臓病だけを基準に食事を選べないことがあります。
その子の病気や体調に合わせて、どの食事がよいかを総合的に考えることが大切です。
3. 切り替えは少しずつ行う
新しいフードへ急に切り替えると、警戒して食べなくなることがあります。
最初は今までのごはんに療法食を少量混ぜ、1〜2週間ほどかけて少しずつ割合を増やしていきましょう。切り替え中も、食欲や便の状態、体重の変化を見ながら進めることが大切です。
療法食を食べてくれないときの工夫
腎臓病が進むと、老廃物の影響で吐き気やむかつきが出て、食欲が落ちることがあります。
特に猫は食事の好みがはっきりしており、環境の変化にも敏感です。
療法食を食べてくれないときは、無理に食べさせようとせず、次のような工夫を試してみましょう。
・温めて香りを立たせる
ウェットフードや、ぬるま湯でふやかしたドライフードを人肌程度に温めると、香りが立ち、食べやすくなることがあります。
・食器の位置や環境を見直す
首や腰に負担がかからないように、少し高さのある食器を使う方法があります。
また、ほかのペットや人の動きが気にならない、静かな場所で与えることも大切です。
・食事の回数を分ける
一度にたくさん食べられない場合は、1回の量を減らし、1日3〜4回に分けると食べやすくなることがあります。
家庭で気をつけたい与え方のポイント
腎臓病の食事管理では、療法食を選ぶだけでなく、家庭での与え方も大切です。
・おやつや人間の食べ物は控える
味の濃い人の食べ物はもちろん、犬用・猫用のおやつも、腎臓病の管理中は注意が必要です。
おやつによって療法食の栄養バランスが崩れてしまうことがあります。
どうしてもおやつを与えたい場合は、腎臓病の子に使えるものがあるか、事前に動物病院へ相談しましょう。
・新鮮な水をいつでも飲めるようにする
腎臓病の犬や猫は、尿を濃くする力が落ち、薄い尿をたくさん出すことがあります。
その分、脱水を起こしやすくなっているため、水分をとりやすい環境づくりが大切です。
水飲み場を増やす、器を変える、ウェットフードを取り入れるなど、その子に合った方法を試してみましょう。
・食事内容や体調の変化を記録する
食べた量、水を飲む量、尿の回数や量、体重、元気の様子などを簡単にメモしておくと、診察時に役立ちます。
多頭飼育の場合は、ほかの犬猫のごはんを食べてしまわないように注意が必要です。
食事の場所を分ける、食べ終わるまで見守るなど、ご家庭に合った方法で管理しましょう。
定期検査で食事内容を見直すことが大切です
慢性腎臓病は、長く付き合っていく病気です。
状態は少しずつ変わるため、今は合っている食事でも、将来的に見直しが必要になることがあります。
定期的に血液検査や尿検査、体重測定、血圧測定などを行い、現在の状態に合った食事かどうかを確認していきましょう。
ご自宅で、食欲や体重が落ちてきた、吐くことが増えた、水を飲む量や尿の量が急に変わったといった変化がある場合も、早めに相談してください。
まとめ
犬・猫の腎臓病では、薬だけでなく食事管理も大切です。
療法食は、病状や体調、食べやすさを考えながら選ぶ必要があります。
おやつやトッピング、食べないときの対応に迷う場合は、自己判断で進めず動物病院へ相談しましょう。
定期検査を受けながら、その子に合った食事管理を続けていくことが大切です。
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