「うちの子は元気だから、大丈夫。」そう思っていませんか?
愛犬や愛猫は、私たちと同じように年齢を重ね、体調も少しずつ変化していきます。
しかし、犬や猫は本能的に不調を隠しがちで、気づいたときには病気が進んでいた、なんてことも少なくありません。
そこで大切なのが「定期的な健康診断」です。健康診断は、表面上は元気に見える子の隠れたサインを早期にキャッチし、いつまでも元気で長生きしてもらうための大きな助けになります。
この記事では、健康診断のメリットや必要性、年齢や状態に合わせた検査内容などをわかりやすく解説します。
なぜ健康診断が大切なの?
犬や猫は人間よりも数倍の速さで年をとります。1年が過ぎるたび、人間の数年分の変化が体内で起こっているといっても過言ではありません。
そして犬や猫は、体調不良を言葉で伝えられないうえに、不調を隠す習性があります。そのため、飼い主様が「なんだかおかしい」と気づいた時には、病気がかなり進行していることもあります。
定期的な健康診断は、こうした「見えないサイン」を早期に見つける予防医療の一環です。元気なうちから定期健診を受けることで、若齢時には膝蓋骨脱臼や先天性疾患、中高齢期には心臓病や腎臓病、がんなどの慢性疾患を早期に発見することが可能です。早期に治療を開始することで病気の進行を抑えられ、ペットの生活の質(QOL)を維持できるだけでなく、結果的に治療費を抑えることにもつながります。
健康診断でわかること
健康診断では、まず身体検査が行われます。これは、体重測定や皮膚・被毛、口腔内、目・耳などを視診し、同時に触診でリンパ節やお腹の状態を確認します。こうした基本的なチェックだけでも、皮膚病や歯周病、肥満などが見つかることがあります。
次に血液検査では、赤血球や白血球、血糖値、肝臓や腎臓の機能指標となる値を調べ、貧血や感染症、内臓の疾患などを早期に発見できます。
また、レントゲン検査や超音波検査によって、心臓や肺、肝臓、腎臓などの臓器の大きさ・形状・状態をチェックでき、腫瘍や結石、心臓病の早期発見に役立ちます。
年齢別の推奨される検査内容
・若い時期(1歳未満)
成長が著しい子犬・子猫では、ワクチン接種や寄生虫検査、基本的な血液検査が中心となります。骨格や歯の状態など、成長過程で見逃せないポイントを確認します。
・成犬・成猫期(1~7歳ごろ)
成人期は表面的な健康トラブルが現れやすい時期です。身体検査に加え、血液検査、糞便検査、尿検査、場合によってはレントゲン・超音波検査で内臓の様子を確認します。
・シニア期(7~8歳以上)
シニア期になると、加齢による臓器の衰えが進み、腎不全、心疾患、がんなどの深刻な病気が増えます。この時期は、血液検査やレントゲン・超音波検査に加え、心電図、血圧測定などより詳しい検査が推奨されます。
健康診断の頻度・タイミング
年齢や健康状態により、健康診断の頻度は異なります。若齢期や成犬・成猫期では、毎年の予防接種とともに、年1回の健康診断が推奨されます。一方、病気のリスクが高まるシニア期では、年2回の健康診断が理想的です。
持病がある場合や症状が気になる場合には、必要に応じて診断の頻度を増やすことが勧められるため、適切なスケジュールはかかりつけの獣医師と相談して決めるとよいでしょう。
また、夏の暑さや冬の寒さなど、気圧や気温の変化が激しい季節には特定の病気が発症しやすくなることもあります。こうした環境要因を考慮し、診断時期を調整することも大切です。
健康診断前の準備と注意点
健康診断を受ける際には、以下の点に注意するとよいでしょう。
・絶食の確認
血液検査や超音波検査を行う場合、正確な結果を得るために絶食が必要な場合があります。検査のタイミングによって絶食時間が異なるため、事前に動物病院へ確認しましょう。
・普段の様子をメモする
食欲や飲水量、排便・排尿の様子、元気さ、気になる仕草など、日ごろからメモしておくと獣医師も的確な判断がしやすくなります。
・ストレスへの配慮
お気に入りのブランケットやおもちゃを持参すると、慣れない環境でも少しリラックスできます。また、待合室で優しく声をかけるなど、安心感を与えてあげましょう。
なお、病院が苦手な犬や猫には、あらかじめ内服の鎮静薬を使用することも可能です。気になる方は、事前に獣医師までご相談ください。
健康管理のポイント
犬や猫は本能的に症状を隠すため、健康状態を正確に把握するには定期的な健康診断が欠かせません。また、毎年同じ病院で検査を受けることで、その子の特性や数値の変化をより早く把握することができます。愛犬・愛猫のことを深く理解しているかかりつけ医の存在は、病気の早期発見や適切な治療につながる重要な要素です。
ご自宅では、愛犬・愛猫の普段の様子をしっかり観察し、少しでも異変を感じた場合には早めに動物病院を受診しましょう。日々の観察と定期的な健康診断を組み合わせることで、より効果的な予防医療を実現し、大切なペットの健康を守ることができます。
まとめ
犬や猫は言葉で不調を訴えることができません。
そのため、飼い主様が積極的に健康状態を把握し、定期的な健康診断を受けることが何よりも重要です。早期発見・早期治療による予防医療は、病気による負担や治療費を軽減し、愛犬・愛猫の健康寿命を伸ばすことができます。
年齢や季節、生活スタイルに合わせて適切なタイミングで健康診断を受け、日々の観察も怠らないようにしてあげましょう。
そうした積み重ねが、大切な家族と健やかで充実した時間を過ごす一番の近道となります。
兵庫県神戸市須磨区の『おおした動物病院』
℡:078-731-0001